漆を塗ることによるメリット
- 伝統的な美しさ、高級感の表現
- 木材の耐久性の向上(防水、防カビ、防害虫、抗菌等)
下地の種類
- 本堅地(ほんかたじ) 伝統的工法で漆を使用するため、最も防水性、耐久性に優れるが、最も高価格。工程が多く、施工難易度が高い。仕上がりは美しい。弊社が主に用いている工法。
- 泥地、半田地 弊社では使用いたしません 伝統的工法。膠(にかわ)を使用するため防水性、耐久性に乏しい。ヤセが出にくい。
- 化学塗料を用いた下地 弊社では使用いたしません シーラー、パテ、サーフェイサー、カシュー、ウレタン塗料等を使用。一応の防水性はあるものの、ヤセや劣化が早い。施工は容易で工期も短く安価。
工程(本堅地~蝋色)
1.木地調整
元々塗装してある場合は剥がして木地を露出させる。木材の割れや穴、節を埋め、木や刻苧(こくそ)で補修する。(※刻苧=生漆+米糊+ケヤキの粉+麻布の粉) 弊社では施工後の剥がれや浮きを防ぐため、元の塗装は完全に剥離させ、木地から仕事を始めます。 ※木材の破損箇所を修復する場合に限り接着剤を使用することがあります。
2.木地固め
テレピン油※で希釈した生漆を木地に含浸させる。防水性の確保と不安定な箇所を漆で固める。(※テレピン油=松の樹脂から取る油)
3.布着せ
麻布を糊漆で木地に張りつける。割れやヤセの防止のため。(※ 糊漆=生漆+米糊+小麦粉)
4.布目摺り
切粉をヘラ付けして布の目を埋め、平らにする。(※切粉=生漆+地の粉、砥の粉)(地の粉は荒く、砥の粉は細かい。赤土の一種。)
5.地付け
“地”をヘラ付けする。下地の十分な強度を確保し、大まかな形を作る。(※地=生漆+地の粉)
6.切子付け、錆付け(きりこつけ、さびつけ)
切粉をヘラ付けする。ヘラ付けと研磨を繰り返し、下地を正確に形成する。最後にキメの細かい錆をヘラ付けする(※錆=生漆+砥の粉又は地の粉)
7.地研ぎ
錆をすべて付け終わったのち、砥石で平らに研ぎ上げる。
8.地固め
研ぎ上げた下地に、テレピン油で希釈した生漆を含浸させる。
9.下塗、中塗
中塗漆を人毛でできた専用の漆刷毛で塗る。下塗→乾燥→研磨→中塗→乾燥→研磨 の順で進める。(※中塗漆=油の入っていない比較的安価な黒漆)
10.上塗り
立塗または蝋色用上塗漆を人毛でできた専用の漆刷毛で塗る。立塗の場合は乾燥させて完成。 ●立塗用黒漆→艶を出すため、油を混入させた上質な黒漆 ●呂色用黒漆→油の入っていない上質な黒漆
11.炭研ぎ(ここから蝋色工程)
駿河炭、静岡炭と呼ばれる木炭や専用の砥石を使い、乾燥した蝋色漆を研摩する。
12.胴摺り
砥の粉や火で炙った炭の粉を摺り込み、さらに目を細かくする。
13.生漆摺り込み~蝋色磨き
伊勢早と呼ばれる上質の生漆摺り込み、乾燥後鹿の角粉を手の平につけて磨く。
完成
柱を蝋色した写真です。▲の部分より左が柱です。天井の細かい様子まで歪みなく映り込んでいるのがわかります。
漆の乾燥に要する時間について
温度、湿度が高いとよく乾き、低いと乾きが遅いです。
5~10月頃が作業に適しています。11~4月頃は温度、湿度をコントロールする必要がある場合がありますが、施工は可能です。その場合若干工期は長くなります。