当社は、お寺様に於ける同等の施工箇所への同等の仕事内容での場合、他社に比較して価格設定が相当低くなっております。
にもかかわらず「○○社のほうがおたくより安い。」と言うお声をしばしば聞きます。
何故でしょうか?

それはこのような理由からです。

近年、仏壇にはどのような材料を使い、どのような製法を使い、どこの産地で生産されたかと言うことに対するある程度の品質表示の規定が出来ました。
しかし、現場に於ける漆塗りには重要文化財等を除き、未だに明確な品質表示の規定がありません。
その結果、カシュー、ウレタン、パテ、サーフェーサー等の化学塗料や簡素化された工法を用いた仕事と、それとは全く異なる私どものような伝統的な材料や工法を用いた仕事が全く同じカテゴリーの中で混在、競合すると言うことが起こってしまっています。
更に、下地や中塗りまで化学塗料を用い、最後の仕上げの上塗りのたった一工程のみに天然漆を塗る業者も多いので、そのような場合でも、「本物の漆を塗っています。」と宣言されますと、一般の方にはますます私どもの仕事との違いがわからなくなってしまいます。

お寺様がそのような簡素化・近代化された材料や工法を用いることをご納得の上で施工されるのであれば問題はありません。
しかしお寺様によっては昔ながらの伝統工法を求めておられるのに、必ずしも求められているような仕事がなされていない現実が多々ございます。

お内陣全体を漆塗りする場合、私は一度に何十kgもの天然漆を使用します。
材料だけでも化学塗料に比べて相当高額になりますし、工程の多さ、難しさも化学塗料の比ではありません。

天然漆は、一本の漆の木からたったコップ二杯分しか採れないのです。
最近は天然漆の価格も高騰し、化学塗料との材料費の差はますます大きくなっています。
価格に関しては、私どもは化学塗料を使った仕事にはとても太刀打ち出来ません。

しかし、私どもの伝統的な仕事の内容や価値や本質をよくご理解して下さっているお寺様には逆に、「そんな安い値段でいいの?」とおっしゃって頂けることもございます。

これから漆塗りのお仕事をされるご予定のお寺様は、依頼先の業者に、「下地の一番最初の段階から最後の上塗りまで、全て天然漆を使用するか?」と、どうぞお尋ねになって下さい。
そこで、胸を張って最初から最後まで全ての工程で天然漆を使用すると言える業者が、本物の「伝統」を名乗るに値する業者です。

いつか、私どもの伝統的な仕事と、化学塗料を使った簡易的な仕事との明確な違いを一般の方々に広く認知して頂ける日が来ることを願って止みません。

注)代用漆と言う名称の塗料がございます。天然漆とは全く異なる化学塗料です。ご注意下さい。

天然漆蝋色仕上げ(右)と、経年劣化で木地の木目が浮き出たカシュー塗り仕上げ(左)

天然漆蝋色仕上げ(右)と、経年劣化で木地の木目が浮き出たカシュー塗り仕上げ(左)

下地に使う漆にも、「天然漆」と品名が明記されています。

下地に使う漆にも、「天然漆」と品名が明記されています。